薬剤師の働き方|派遣薬剤師として働くメリット・デメリット


「高時給で働きたい」「ライフスタイルに合わせた柔軟な働き方をしたい」と考えている薬剤師の方にとって、派遣という選択肢は魅力的です。派遣薬剤師は、調剤薬局やドラッグストア、病院などで一定期間働くスタイルで、正社員やパートとは異なるメリットがあります。
しかし、「派遣薬剤師の仕事はどのようなものか」「正社員と比べて待遇はどうなのか」「デメリットはないのか」といった疑問を持つ方も多いでしょう。
本記事では、派遣薬剤師の仕事内容や時給、よくある不安、メリット・デメリットについて詳しく解説します。自分に合った働き方を見つけるための参考にしてください。

派遣薬剤師とは?

派遣薬剤師とは、派遣会社と雇用契約を結び、一定期間ごとに契約を更新しながら、さまざまな職場で働く薬剤師のことです。

派遣薬剤師の基本的な仕組み

派遣薬剤師とは、派遣会社に登録し、契約期間ごとに異なる職場で働く薬剤師のことを指します。正社員やパートと異なり、直接雇用ではなく、派遣会社を通じて職場を紹介され、一定期間の契約で勤務するのが特徴です。

<派遣薬剤師の主な仕組み>
・雇用主:派遣会社
・勤務先:調剤薬局・ドラッグストア・病院など
・契約期間:一般的に3~6か月ごとに更新
・給与形態:時給制

派遣薬剤師の仕事内容

派遣薬剤師の業務内容は、勤務先によって異なります。

調剤薬局

調剤薬局における派遣薬剤師の主な業務は、以下のようなものがあります。

・処方箋の確認と調剤:処方箋に基づいて適切に薬を調剤し、必要に応じて疑義照会を行う。
・服薬指導:患者に対し、薬の飲み方や注意点を説明する。
・薬歴管理:患者ごとの薬の履歴を記録し、適切な服薬管理を行う。

派遣薬剤師は即戦力として求められるため、業務をスムーズにこなす能力が必要です。また、短期間の勤務が多いため、スピーディーに職場のルールやシステムに適応する力が求められます。

ドラッグストア

ドラッグストア勤務の派遣薬剤師は、調剤業務を行う場合と、OTC医薬品(一般用医薬品)の販売業務を中心に担当する場合があります。

・OTC医薬品の販売と相談対応:お客様の症状や体調に応じた適切な医薬品の提案・販売を行う。
・調剤業務(併設店舗の場合):処方箋に基づく調剤、服薬指導を行う。
・在庫管理・発注業務:店舗で取り扱う医薬品の在庫確認と発注を担当する。

ドラッグストアは接客が多いため、コミュニケーション能力が求められる職場です。特に、症状に応じたOTC医薬品の提案や健康相談が重要な役割となります。

病院

病院薬剤師として派遣勤務する場合、調剤薬局やドラッグストアとは異なり、入院患者への服薬指導や医療スタッフとの連携が中心となります。

・入院患者の服薬指導:病気や治療方針に応じた適切な薬の説明を行う。
・医薬品管理:病院内で使用される医薬品の在庫管理や発注を担当する。
・医師や看護師との連携:処方内容の確認や副作用のチェックを行い、必要に応じて医師へ情報提供を行う。

病院では、高度な専門知識やチーム医療のスキルが求められることが多く、調剤薬局やドラッグストアとは異なるやりがいがあります。

派遣薬剤師の時給

派遣薬剤師の時給は、正社員やパートと比べて高めに設定される傾向があります。
平均時給は3000~4500円程度に設定されており、勤務先や地域によっても変動します。
特に都市部は求人数が多いメリットがあるものの、比較的時給は低めに設定されている一方、地方に行くと人手不足の影響で時給が高めに設定されていることも多いです。

派遣として働くよくある不安

薬剤師としても「派遣」という就業形態に抵抗を持つ方をいるのではないでしょうか。派遣という働き方に対するイメージやそれに対する不安、実際の現場ではどうなっているのでしょうか。

薬剤師にも「派遣切り」の心配はある?

派遣契約は一定期間ごとに更新されるため、契約終了のリスクはゼロではありません。ただし、薬剤師業界は慢性的な人手不足のため、実際には契約が打ち切られるケースは少ないです。

派遣薬剤師は福利厚生などの待遇は悪い?

派遣薬剤師でも、社会保険や有給休暇などの福利厚生を受けられる場合が多いです。ただし、正社員と異なり、ボーナスや退職金がない点はデメリットといえます。

派遣薬剤師として働くメリット

派遣の薬剤師として働く主なメリットを紹介します。

高時給で効率的に働ける

派遣薬剤師の最大のメリットのひとつは、時給が高いことです。
なぜ派遣薬剤師の時給が高いのかというと、雇用が期間限定であること、即戦力としてのスキルが求められること、そして人手不足の影響などが関係しています。特に、地方や夜勤・土日勤務の案件では、時給がさらに高くなる傾向があります。効率よく収入を得たい人にとって、派遣薬剤師は非常に魅力的な働き方と言えるでしょう。

柔軟な働き方ができる

ライフスタイルに合わせた働き方ができる点も大きなメリットです。正社員のように固定のシフトで働く必要がなく、契約ごとに勤務日数や時間を自由に選びやすいのが特徴です。たとえば、週3日勤務にしたり、短期間の契約で働いたりといった調整が可能です。
特に、子育てや介護など家庭の事情がある人にとっては、働く時間や日数を調整しながらキャリアを維持できる点が魅力です。

スキルアップができる

派遣薬剤師は、さまざまな職場を経験することで、スキルの幅を広げることができる点も大きなメリットです。正社員として1つの職場に長く勤務する場合、業務内容が固定されがちですが、派遣では異なる職場での勤務経験ができます。
例えば、調剤薬局・ドラッグストア・病院など異なる環境で働くことで、それぞれの業務の特徴を学び、幅広い知識やスキルを身につけることができます。また、新しい調剤システムや薬歴管理の方法を習得する機会も多く、転職やキャリアアップを考える際にも役立ちます。
さらに、派遣薬剤師として働くことで、特定の分野に強みを持つことも可能です。たとえば、病院での経験を活かして専門薬剤師を目指したり、ドラッグストアでのOTC販売経験を活かして接客スキルを向上させたりすることができます。多様な職場での経験が、自身のキャリアの選択肢を広げることにつながります。

人間関係にしばられない

職場の人間関係の悩みが少ないことも、派遣薬剤師の大きなメリットのひとつです。正社員の場合、同じ職場で長期間働くため、人間関係が原因でストレスを感じることもあります。しかし、派遣薬剤師は契約期間が決まっているため、合わない職場があっても契約終了後に別の職場に移ることができるという安心感があります。
また、派遣薬剤師は基本的に業務の即戦力として採用されるため、職場の人間関係に深く関与する必要が少なく、仕事に集中しやすい環境が整っています。人間関係のトラブルが少なく、ドライな関係を維持しながら働けるため、人付き合いが苦手な人や、職場の雰囲気に左右されずに働きたい人にとっては、大きな利点となるでしょう。

派遣社員として働くデメリット

メリットの一方でデメリットも存在します。

役職にはつけない

派遣薬剤師は、基本的に管理職や責任者としての役割を担うことができません。これは、派遣という雇用形態の特性上、一定の契約期間内で決められた業務を遂行することが主な役割となるためです。
正社員の場合、薬局長や管理薬剤師などの役職に就くことができ、マネジメント業務を経験する機会も増えます。しかし、派遣薬剤師の場合、職場に長く在籍するわけではないため、組織の運営や管理に関わることはほとんどありません。そのため、「キャリアアップを目指して責任あるポジションに就きたい」と考えている人にとっては、デメリットとなる可能性があります。
また、役職に就けないということは、昇給や昇進の機会が少ないということでもあります。派遣薬剤師は高時給ではあるものの、正社員のように継続的な給与アップが期待できない点には注意が必要です。

職場になじむのが難しい

短派遣薬剤師は、契約期間が決まっているため、長期間同じ職場で働くことが少ないという特徴があります。そのため、新しい職場の環境や人間関係になじむ前に契約が終了してしまうことも多く、職場に愛着を持ちにくいというデメリットがあります。
また、派遣薬剤師は即戦力として求められるため、短期間で業務に慣れ、周囲と協力しながら仕事を進めるスキルが必要になります。しかし、職場によっては正社員やパートのスタッフとの間に距離が生まれやすく、「派遣だから」と区別されることもあるため、心理的な負担を感じる場合もあるでしょう。
特に、チームワークを重視する職場や、アットホームな雰囲気の職場では、派遣社員が馴染みにくいケースがあるため、人間関係の構築が得意でない人には厳しく感じることもあります。

派遣薬剤師に向いている人

実際に派遣薬剤師の働き方が向いている人はどんな人でしょうか。具体的に紹介していきます。

様々な経験を積みたい人

調剤薬局・病院・ドラッグストアなど、幅広い業務を経験できるため、自分のキャリアの選択肢を増やしたい人、スキルアップを重視する人には派遣薬剤師が適しています。

人間関係のストレスを減らしたい人

派遣薬剤師は契約期間が決まっています。もしも人間関係が合わないと感じても、契約が終了すれば新しい環境に移ることができます。そのため、職場の人間関係で悩みたくない人に向いています。人間関係に左右されずに働きたい人、ドライな関係を好む人には向いている働き方と言えるでしょう。

ライフスタイルに合わせた働き方をしたい人

家庭や育児と両立しながら、趣味や副業と両立しながらなど、自分のペースで働きたい人には派遣が最適です。

新しい環境に抵抗がない人

派遣は職場が変わることが多いため、新しい環境に適応しやすい人に向いています。派遣薬剤師として働く場合は、初めての職場でもすぐに馴染める適応力や、新しい環境で学ぶことを楽しめる柔軟性があると良いでしょう。

まとめ

派遣薬剤師は、高時給で効率よく働けることや、ライフスタイルに合わせた柔軟な働き方ができることが大きなメリットです。さらに、さまざまな職場で経験を積むことができ、スキルアップの機会も多いため、キャリアの選択肢を広げたい人にも適しています。
一方で、管理職や責任あるポジションに就くことができない、職場に馴染むのが難しいといったデメリットもあります。また、契約期間が限られているため、安定性を重視する人にはおすすめしません。
特に、新しい環境に順応しやすく、柔軟な働き方を求める人、人間関係のストレスを減らしたい人には、派遣薬剤師という働き方が適しています。自分の価値観やキャリアプランに合わせて、最適な働き方を選ぶことが大切です。