作業療法士のお仕事の内容や、特徴について

作業療法士とは？

作業療法士の日々の業務は、患者さんの「できる」を増やすことに尽きますが、その背景には、深い専門知識と技術が必要とされます。ここでは、作業療法士が担う役割から、この職業に就くために必要な資格、そして彼らが活躍する多様な場所について、一つ一つ見ていきましょう。

作業療法士の役割

作業療法士の最前線での役割は、患者さんが抱える身体的、精神的障害を克服し、日常生活や社会生活において最大限の自立を目指すサポートを行うことです。この職業の特徴は、患者さん一人ひとりの状態やニーズに応じた個別の治療プランを立案・実施する点にあります。日常生活の基本動作から、趣味や社会活動への参加まで、患者さんが「やりたいこと」を「できること」に変えていく過程において、作業療法士は重要な役割を果たします。

作業療法士で必要な資格

作業療法士になるためには、専門的な教育と訓練を受け、国家試験に合格する必要があります。作業療法士を目指す学生は、厚生労働省が認定した養成施設で4年間の教育を受けた後、国家試験に挑むことになります。この資格は、作業療法士として必要な専門知識と技術、倫理観を身につけていることを証明するものであり、資格取得後は、病院やリハビリテーション施設、介護施設などでプロフェッショナルとして活動することができます。

作業療法士が活躍する場所

作業療法士の活躍の場は、病院やリハビリテーション施設だけにとどまりません。介護施設、特別支援学校、地域包括支援センターなど、患者さんや利用者が日常生活を送る様々な場所で、その専門性を発揮します。また、在宅リハビリテーションや地域社会での活動支援など、社会のニーズに応じて活躍のフィールドは広がりを見せています。作業療法士は、これらの場所で患者さんや利用者の「できること」を一つでも増やすことを目指し、日々努力を重ねています。

作業療法士の仕事内容

基本的動作能力の向上

作業療法士が患者さんの基本的動作能力の向上を目指すとき、彼らはまず、患者さんが日常生活で直面する困難を特定します。これには食事、着替え、入浴、トイレの使用など、日常生活動作（ADL）の向上が含まれます。作業療法士は、患者さんがこれらの基本的な活動をより独立して行えるよう、個別のプログラムを計画し、実施します。たとえば、関節の可動域を改善するための運動療法、筋力を強化するエクササイズ、または日常生活を容易にするための補助具の使用方法の指導などがあります。作業療法士は、患者さんの身体的能力だけでなく、環境や活動に対する適応能力を高めることにも注力します。

応用的動作能力の向上

応用的動作能力の向上は、患者さんが自分の趣味や職業、社会活動に再び参加できるようになることを目指します。ここでは、作業療法士は、患者さんの特定の興味や必要に応じたより複雑な活動やタスクに焦点を当てます。これには、料理、ガーデニング、パソコン作業、運転といった活動が含まれることがあります。作業療法士は、患者さんがこれらの活動を安全かつ効果的に行えるように、カスタマイズされた介入計画を立てます。これには、特定のスキルトレーニング、活動の段階的な再開、使用する道具や環境の調整などが含まれます。患者さんが社会生活の中でより充実した経験を持てるように、作業療法士は個々のニーズに合わせた支援を提供します。

社会参加・復帰支援

作業療法士による社会参加・復帰支援は、患者さんが病気や怪我、障害を乗り越え、社会に再び積極的に参加できるようにすることを目指します。このプロセスには、職場復帰のための支援、趣味活動やボランティア活動への参加促進、地域社会のイベントへの関与などが含まれます。作業療法士は、患者さんが以前に楽しんでいた活動に復帰するための支援だけでなく、新たな趣味や興味を見つけるための支援も行います。また、患者さんが社会の一員として機能するための自信を取り戻すことができるよう、精神的なサポートも提供します。作業療法士は、患者さんが社会において有意義な役割を果たせるようになるための橋渡し役を務めることで、彼らの自立と自尊心の向上に貢献します。

作業療法士の大変なところ

体力的な負担

作業療法士の仕事は、多くの場合、肉体的にも要求が高いものです。患者さんを支えたり、移動させたりする必要がある場合、これは顕著になります。また、一日中立ち仕事をすることも少なくなく、特に患者さんの身体機能を向上させるための運動や活動を指導する際には、自らも同じ動作を繰り返すことが求められます。このような体力的な負担は、時間とともに蓄積し、作業療法士自身の身体にストレスや疲労をもたらすことがあります。この職業を長く続けるためには、自己の身体を適切にケアすること、適度な休息を取ることが不可欠です。

患者さんとのコミュニケーション

作業療法士は、様々な背景や状況を持つ患者さんと日々接します。そのため、患者さん一人ひとりと効果的にコミュニケーションを取ることは、時に大きなストレスを生むことがあります。言語的な障壁がある場合や、患者さんが抱える精神的な問題、認知症などによって、コミュニケーションが難しくなることもあります。また、治療の必要性やその過程を患者さんやその家族に理解してもらうことも、簡単なことではありません。このような場合、作業療法士は、患者さんや家族との信頼関係を築き、オープンなコミュニケーションを保つために、高度な対人スキルと忍耐力を発揮する必要があります。

結果がすぐに出ない

作業療法は、しばしば時間を要します。患者さんの状態や能力が改善するまでには、週単位、あるいは月単位の時間が必要となることが多く、時には目に見える進歩がないように感じられることもあります。このような状況は、患者さんだけでなく、作業療法士にとっても精神的に負荷がかかります。患者さんのモチベーションを維持し、治療計画に対する信頼を保つためには、作業療法士は患者さんを継続的に支援し、小さな進歩を見つけては称賛するなど、ポジティブな姿勢を保つ必要があります。この過程で、作業療法士自身の精神的な強さも試されることとなります。

作業療法士のやりがい

患者さんの成長を間近で見守れる

作業療法士にとって最大のやりがいの一つは、患者さんの成長を間近で見守ることができる点にあります。初めは基本的な日常生活動作さえも難しいと感じていた患者さんが、時間をかけて自分で食事をする、着替える、移動するといったことができるようになる過程は、作業療法士にとっても大きな喜びとなります。特に、長期間にわたるリハビリテーションが必要な患者さんの場合、その小さな一歩一歩の進歩が、作業療法士にとっては大きな達成感をもたらします。患者さんが自分の目標を達成し、以前はできなかったことができるようになる姿を見ることは、この職業を選んだ理由を再確認させてくれる瞬間です。

社会に貢献できる

作業療法士の仕事は、個々の患者さんを支援するだけでなく、より広い意味で社会に貢献することにもつながります。患者さんが自立した生活を送れるようになることは、その家族や周囲の人々にも大きな影響を与え、ポジティブな変化をもたらします。また、作業療法士は、障害を持つ人々が社会の一員として活躍できる環境を作るためにも貢献しています。地域社会における障害の理解を深め、より包括的な社会を実現するための取り組みに関わることも、この職業の大きなやりがいの一つです。社会全体が多様性を受け入れ、すべての人が支え合いながら生きていくことの重要性を伝える役割を担うことは、作業療法士にとって大きな誇りとなります。